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途中で死んでしまった二人の名前を出す。喉からわき出そうになった何かを飲み込みながら。
「灘村 秀一(なだむらしゅういち)と北村 早苗(きたむらさなえ)です。二人は……施設の中で死にました」
彼らの姿を思い出してしまう。あの時より感情が昂り、目に涙が浮きそうになるのがわかった。死んだ友人を思い出したから。
浜は申し訳ないが、あの性格だったからあまり気にしなかった。人が死んだ衝撃はあったけど。
灘村と北村は、まあまあ話した相手だったし良識的だった。だから……だ。
一番ショックなのは才羅の死。まだ日が浅いから実感がわかないけども。
「……大丈夫かい?」
鈴羽さんに呼び掛けられ、現実に引き戻された。顔を除き込むように俺の目を見る。
「は、はい」
短く答えるが、後ろから母に肩を叩かれた。
「大丈夫じゃなさそうね」
そして、心配そうな声でそう言われる。母は心を読んで判断したのだろう。
「今日はここまでにしておこうか」
ノートを閉じる鈴羽さん。心配するように言って、コップに注がれたコーヒーをすする。
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