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聴取はそのまま終了し、開放された。次は二週間後らしい。それまでは他の人から話を聞いていくとのことだ。
「兄貴……、辛そうだけど……」
警察署から出た時、弟……心にまで心配された。笑って『大丈夫』と答えたが、心に口をへの字に曲げてこう返される。
「顔が青白いけど」
「ちょっと具合悪いかも」
車に乗り込んだところでそう答えた。父の運転する車はそのまま自宅へと向かっている。
……ふと考えた。
「友達のところ?」
不意に母が口を開く。心を読んだのだろう。
今も入院しているであろう、春斗の様子を見たいと考えていた。唯一居場所を知っているし、怪我が心配だったから。
「……うん。春斗のところに行きたい。多分ここから一番近い病院だと思う。大きくて有名なとこ」
車は進路を変えた。この街で一番大きな病院に向かってくれるはずだ。
「そういえば、お前の変調はなんだったんだ?」
運転中の父に話しかけられる。そうだった。亜矢子の施設から戻って、一度もこの話題に触れていないんだ。父だけではなく、母と弟も気になっていることだろう。
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