ぼくとドッペルゲンガーのパラドックス

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 ドッペルゲンガーに出会うと『死ぬ』って、知ってる?  まあ、結論から言うとぼくはあのとき『死ななかった』んだけど、とにかくここは冷える。  冷えるし、暗いし、誰もいないし、あれ? もしかして、ここはもうとっくに死後の世界? うん、その可能性は想定していなかったな。やっべ。  ああ、でも、ぼくの頭の上の毛玉はもそもそ動きまわっていて体温が伝わってくるし、しんしんと雪が降り続ける中、どこまでも群青の闇がひろがっている。ここは森の中だから、見渡す限り人工的な灯りはない。  唯一の灯りは、ぼくの真横のランプ。無機質な金属の床と壁を、丸く照らしている。ランプのやわらかな光は、雪の一粒一粒をきらめかせている。降りしきる淡雪は、はかなく金色に光って消えて行く。  『きれい』だ。何もかも。  だから、きっとぼくは『生きて』いるんだと思う。  この『感動』が止まらない限り。  この『思考』が生まれ続ける限り。  ぼくはここに『在る』のだから。
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