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浮いているよな、沈んでいるような。地に足のついていない気持ち悪い感覚を味わっていると、頭の中に声が聞こえてきた。
――――貴方は〝無〟、そして〝全〟
――――貴方は〝光〟、そして〝闇〟
――――いずれ訪れる運命に、貴方は対面することでしょう
――――でも、どうか恐れないで
――――たとえ全てが色褪せたとしても
――――貴方には、決して消えないものがあるということを
それは――――
◇
「・・・・えっと、そんなに握られるとちょっとてれるなぁ、なんて」
まどろみの中、そんな声が聞こえて目を覚ます。寝ぼけた目をこすることもせずに握られている手の主を見上げる。癖のある髪をサイドポニーでまとめてこちらをのぞき込んでくる黄色の瞳と出逢う。パッチリとした大きな瞳は困ったような、でもどこか愛おしそうな光を宿していた。
「へぇ、意外と大胆なのね」
「こ、こここコレは所謂――――」
「はいはい、ラブはとりあえず落ち着こうね~」
そんなやりとりを寝ていた体勢から上半身を起こして見る。握っていたては離してあくびを一つ。未だにフワフワとした感覚の中少年は握られていた手を見る。幾度となく繰り返し見てきた夢、その筈がイヤに現実味を帯びていたことに言い知れぬ気持ち悪さを感じて顔を少し顰めた(しかめた)。
「どうかしたの?」
少女、山吹祈里の問いに少年は「いや、」と答え、それきり言葉を発することなく再び体を倒した。
(また寝るの!?)
祈里のそんな驚愕を余所にすやすやと再び寝息を立てる。春の陽気にポカポカとした日差しと程よい気温がさらに眠気を引き立てるのだが・・・・
「コラ!もう休憩終わりだってば」
そう言って強制的に引き起こされる。ボリュームのある青く綺麗な髪をカチューシャで後方に流し、邪魔にならないよう髪と同色のシュシュでまとめて右肩から流している。蒼乃美希だ。
「いっけない、そうだった。さっ、早く練習しよ!」
金髪の髪をピンクのシュシュでまとめた、三人の中でも一際賑やかな少女、桃園ラブがそう急かす。
「行こう、歩夢君」
「・・・・あぁ」
差し出された手を握ることなく立ち上がる。栗色の後ろに流したモミアゲの長いどこか大人びた印象を受ける少年。進藤歩夢。
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