第1章

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ダンスチーム〝クローバー〟。この町四葉町でもちょっとした有名集団であり、全員中学二年という年齢でありながらその実力はプロ顔負けという凄腕だ。この町でその名前を聞けば知らない人はいないほどのもの。 「…うん、なかなかいい感じね」 満足そうに頷くピンクのポニーテールの女性。プロダンサーチーム〝トリニティ〟のリーダーである知念ミユキだ。彼女たちがこれほどまでに実力を身に着けたのはひとえにこの人物あってこそのものだろう。プロの、しかも人気絶頂のグループに直接教えてもらえるのだからこれだけの実力をもっていても不思議ではない。 「ん~、これなら次の大会も優勝ゲットだよ!」 「コラ、調子に乗らないの」 何かと調子に乗りやすいラブを美希がたしなめ、それを見て祈里が苦笑する。それを見て歩夢はいいチームだと素直な感想を漏らす。あまりそういったことを口にはしないが。 「歩夢君もお疲れ様。いやぁやっぱり助手が一人いるだけで指導するのもだいぶ楽だわ」 「いや、俺は別に…」 「謙遜しないの」とミユキに言われるが、本人からしてみれば本当になにもしていないのである。まぁ、何もしていないといってもただ見ていただけではなく、気づいた点をミユキを通じて指導しているので、したといえばしたのだが、それでもミユキに比べたら何もしていないに等しい。それに歩夢自身ダンスの知識がそこまであるわけでもないのでそう込んだ指導もできない。  だが、それでも素人目では到底できないであろう改善点に気付くあたりは只者ではないとミユキも思ったのだろう。初めて異見した時からはずっとこんな感じで練習がある時は必ず付き添っている。 「さて、今日の練習はここまで。私はこのあと予定があるから、みんなお疲れ様」 「お疲れ様でした」と三人の声が揃う。 「ねーねー、お腹も空いたしみんなでドーナツ食べてかない?」 ラブの提案に美希と祈里が頷く。二人の了承を確認した後その後ろで帰り支度をしている歩夢に寄り、 「歩夢も行くでしょ?カオルちゃんのドーナツ!」 「悪いが俺は――――」 「よし、じゃぁ決まりだね!」 有無を言わせず了承とみなし連れていく。実際のところ予定などない歩夢だが、こうも強引にされるといささか解せないところもある。が、それでもなされるがままなあたり満更でもないのだろう。
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