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なんだかんだでこうした誘いを断らない辺り人付き合いは悪くはない。
そう、悪くはないのだが・・・――――
「だいたいなんだあのステップは。タイミングが速すぎる上に一人走りすぎだ」
「ご、ごめんごめん」
「ドーナツを食ってから喋れ。いいか?大体お前はな――――」
このように、ダメ出しをしだしたら止まらないし容赦がない。その方が為にはなるのだがこうも言葉に容赦がないと逆にへこむというもので。
「ら、ラブちゃん、そう気を落とさないで・・・」
「甘い。こいつは一度キツく言わないと直らない。そもそもだな―――」
「でも、ラブちゃんは頑張って合わせる努力もしてるしそこまで言うことないんじゃないかと思うの」
この二人も大概だな、と美希は冷静に紙コップの中身を飲みながら思う。毎度のことながらこうなると口論がヒートアップしていくのがいつもの流れだ。あれがダメだの、そこがいけないなど、言い過ぎたの言葉が足りないだの。
しかし。
「ねぇ美希」
ふとせつなが何か気になったかのように小声で隣に座っている自分にだけ聞こえるようなボリュームで話しかけてきた。祈里と歩夢、そして二人の間に挟まれているラブには彼女たちの会話は聞こえない。
「ブッキーっていつもどこか一歩引いた視点で喋るけど歩夢に対しては結構グイグイ行くわよね?」
言われてみれば、と美希は祈里を見る。普段はおっとりというか、ラブや自分達と比較すればあまり喋らない方だ。そんな彼女が何故か彼が絡む時だけこうもムキになる、それが不思議でならなかった。
なおも二人の口論は熱を上げていく。
「歩夢君てばいつもそう。それ悪い癖だよ?口癖治した方がいいよ」
「お生憎様。口が悪いのは生まれつきなんだよ」
「・・・そんなこと言ってると、本当に友達失くしちゃうかも」
「友達なんて持った覚えはない」
その一言で、祈里が押し黙った。溜息をつく美希とせつな。「またか」という呆れと「もうどうしようもない」という諦めとの両方での溜息は重く凍り付いた空間に落ちる。
「・・・・っ、もう知らない!」
席を立って駆けだす祈里。これは今までになかったことでさすがに静観を決め込んでいた美希とせつなも焦る。
「ちょ、歩夢あんたどうすんのよ!?大会も近いってのにあれブッキー相当傷つくわよ!?」
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