第1章

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「知るか。俺はただ自分の意見を述べたまでだ」 「だからそれがダメなんだって・・・」  呆れて物も言えないと手を頭に当てて溜息を吐く。 「たしかに、今日のラブはどこか調子が良すぎたみたいね。それを指摘した歩夢の言ってることは正しいしわかるわ」  「でもね」とせつなは続ける。 「いくら自分の意見でも、人によっては傷つけてしまうこともあるの。それをもう少しだけ考えてみたらどうかしら?」  せつなの言葉に少し考える素振りをするかのようにコップの中身に目を落とす。そこで、先ほど祈里に言われたことを思い出していた。   ――――友達失くしちゃうよ。 「・・・別にそれでもかまわない」  席を立ち、祈里とは逆方向に歩いていく。 「それなら、関わらなければいいだけの話だ」  そう吐き捨てて去って行った。 ◇  やってしまった、と大きくため息をつく。しばらく走ったところで冷静さを取り戻した祈里はクローバータウン中ほどにある噴水の縁にて腰を下ろし先ほどのことを思い返してうなだれる。どうして彼とはこううまく噛み合わないのだろうと考えるが、そう簡単には答えなどでるわけもなく。 「ブッキー!」  自分を追ってきたラブ達が同じように腰を下ろす。そこで美希から先ほどの歩夢との会話を聴き再びうなだれる。 「ま、まぁ歩夢もああ見えて気にする性質(たち)だし、いつもみたいにまたすぐに仲直りできるわよきっと」 「そうそう。なんてったって私達幼馴染だし」  ラブの笑顔と美希の励ましにより徐々に元のテンションを取り戻しつつある祈里。そこに何故か不満そうにせつなが頬を膨らませる。 「いいわね幼馴染って」 「あ~ん、せつなも大事な友達だよぉ!」  ご立腹なせつなにラブがさながら拗ねる彼女のご機嫌取りをする彼氏のようにすり寄る。・・・いや、ペットのようにも見えなくもないか。そんな様子がおかしくてせつなと美希、祈里が吹き出す。笑顔と笑い声がその場を満たす、そんな中祈里はこの場にいないもう一人の幼馴染に想いを馳せる。 (そうだよね・・・うん、きっといつも通り。また歩夢君と仲直りできる。信じていればきっと・・・私、信じてるっ)  いつも通り。  そう・・・・〝いつも通り〟
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