欲望の声

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柊は凛の懇願とは反対に、凛に近づいてくる。 「どうしてこっちに来るの!?ダメだよ!また捕まっちゃうよ!!」 突然現れたアナザーと、一度囚われた過去がありながらそのアナザーに近づいてくる柊を見て凛は取り乱してしまう。 しかし、柊の顔は穏やかであった。 彼は妹の隣に並ぶと立ち止まり、そっと彼女の頭をなでた。 「大丈夫。」 「でも、お兄ちゃん!お兄ちゃんはお姉ちゃんのこと……!!」 そこまで言って兄の顔を見る。柊はアナザーのことを見据えている。しかし、そこに以前のような悲しみの感情は映っていなかった。 「アナザー、ボクは過去に一度君に捕らえられたことがあるよね。」 「どうなのかしらね。私はあなたを知らない。もしあなたが私に捕らえられたのなら、それは私ではないわ。」 「そっか……。それでも、ボクは君に伝えたいことがある。」 柊の手が凛の肩に回される。 「ありがとう。君のおかげで、ボクはまた前に進むことことができた。」 その言葉を口にすると柊は凛の体を抱き上げ窓から飛び出した。
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