帰り道

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鈴木は、中に入った。 薄暗い店内の壁には、絵画を飾る様にスポットが当たり額が飾っていた。 額の中には、ネクタイが入っていた。 「なんだ、ネクタイかよ」 鈴木が呟くと、 気品のある老人が、 「唯のネクタイではありません。魂を込めて織り上げた品物です」 「だから夢首で、ネクタイと読むんだ」 「そう考えて頂ければ、幸いです」 老人が、そう言った後に続けて、 「お客様、先程の御方が、服を汚したお詫びにこれを」 老人は包みを持ってきた。 「これは?」 鈴木が聞くと、 「先程の御方は、現金は問題になりますので、これを貴方様に仕事の糧にと」 鈴木に、包みを渡した。 「さっきの人は、何を買ったの」 「右から二番目の品物です」 鈴木が見に行くと、総理という名前の額に、赤いネクタイが入っていた。 「50万円、高いねー」 鈴木が言うと、 「いえ、5千万円です」 老人は、そう言って商品のスポットライトを消した。 鈴木は、冗談と思い気にもしなかった。 「御客様、そろそろ閉店ですので、申し訳ないのですが」 そう言って鈴木を、店の外へ出した。 「お客様、注意があります。当店は、それなりの御方が御利用になられております。他言無用でお願いいたします。また、お品物は二度と手に入らないと御覚悟下さい」 鈴木は、 「わかったよ。記念品だろう」 「それでは、良い人生を」 老人は、そう言って店の中に消えていった。 鈴木は、また千鳥足で帰った。
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