7人が本棚に入れています
本棚に追加
鈴木は、中に入った。
薄暗い店内の壁には、絵画を飾る様にスポットが当たり額が飾っていた。
額の中には、ネクタイが入っていた。
「なんだ、ネクタイかよ」
鈴木が呟くと、
気品のある老人が、
「唯のネクタイではありません。魂を込めて織り上げた品物です」
「だから夢首で、ネクタイと読むんだ」
「そう考えて頂ければ、幸いです」
老人が、そう言った後に続けて、
「お客様、先程の御方が、服を汚したお詫びにこれを」
老人は包みを持ってきた。
「これは?」
鈴木が聞くと、
「先程の御方は、現金は問題になりますので、これを貴方様に仕事の糧にと」
鈴木に、包みを渡した。
「さっきの人は、何を買ったの」
「右から二番目の品物です」
鈴木が見に行くと、総理という名前の額に、赤いネクタイが入っていた。
「50万円、高いねー」
鈴木が言うと、
「いえ、5千万円です」
老人は、そう言って商品のスポットライトを消した。
鈴木は、冗談と思い気にもしなかった。
「御客様、そろそろ閉店ですので、申し訳ないのですが」
そう言って鈴木を、店の外へ出した。
「お客様、注意があります。当店は、それなりの御方が御利用になられております。他言無用でお願いいたします。また、お品物は二度と手に入らないと御覚悟下さい」
鈴木は、
「わかったよ。記念品だろう」
「それでは、良い人生を」
老人は、そう言って店の中に消えていった。
鈴木は、また千鳥足で帰った。
最初のコメントを投稿しよう!