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翌日、休みという事も有り鈴木は、昼過ぎに目覚めた。
まだ眠い目を擦り、
「昨日、記念品もらった様な」
そう言いながら、テーブルに置いた包みを開けた。
紺色のネクタイが、包みの中に入っていた。
「夢で無かったんだな。ネクタイか、まあ、いいか」
ネクタイを包みに戻し、テーブルに再び置いた。
月曜日、朝。
「やばい、遅刻だ!」
鈴木は、慌てて会社へ。
慌ててテーブルに置いてあった、ネクタイを持って出た。
「30分も遅刻だ。また課長に説教されるよ」
そう思いながら、急いでいた。
事務所に入ると直ぐに、課長に見つかった。
「鈴木!」
課長に呼ばれた。
「すいません、急用で遅れました」
とっさに、言い訳をした。
課長は笑顔で、
「鈴木君、朝から御苦労さん。君のおかげで、目標達成だ」
何を言っているのか、理解出来ない鈴木。
「鈴木君、やれば出来るんだよ。君がトップだよ」
「トップですか?」
鈴木は、壁の棒グラフを恐る恐る見た。
「300個?」
優秀な営業マンでも月20個も売れば、表彰されるのに、一年分以上の売り上げを
朝一番で売り上げた。
鈴木は席に戻って、隣の容子さんに聞いた。
「容子さん、何があったの」
「鈴木さん、朝一番から注文が殺到ですよ。星ノ商事さんは、100個も注文して
きたのよ」
「そうなの、俺やるね」
「生産部門なんか、もう大変ですよ」
そう言って席を立ち、鈴木にお茶を出した。
「ありがとう」
鈴木は、なんか仕事が楽しくなり、別人の様に仕事に没頭した。
「さあ、帰るかな」
退勤時間になり、帰ろうとした時。
「鈴木君、一緒に帰らない。ご飯でも食べて帰りませんか」
特に用事の無い鈴木は、二つ返事で了承した。
食事まで時間があるので、容子さんの買い物に付き合い、その後に食事をして、
まるで恋人の様な時間を過ごした。
容子さんと別れて、帰り道を歩いていた。
「今日は、何か変な日だな」
鈍感な鈴木でも、変な事が起きているのは理解できていた。
「ここだったよな、あの店」
先日の事を思い出した。
「えっ、店が無い?」
そこには、レンガの壁しか無く、入口が見当たらなかった。
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