第1章

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風が吹く。 以前から風については謎だらけだった。風とは吹くことしか出来ない? 風は、吹くものだから? まあその通りだろう。それ以外の風については、リュ(自分称である)は知らない。吹かない風はただの空気だ。 この丘を越えると、何があるか? 答えは単純、また丘があるだろう。 もしも丘じゃなかったら、あるのは海か平原だ。先に宇宙が広がっているとか、鳥に覆い尽くされた未来都市が見えるとかはない。 世界の形は、必ずもマルでない。それも見たことない。きっとマルに近い形で果てしなく繰り返すんだろう。 だから適当に進んでいたら、帰り道もわからなくなる。 元の場所にちゃんと帰りたければ、決まった道を地図を見ながら歩くのが利口だ。 ただ、リュはそんなことはしない。 地図を持っていなかったので、出発地の位置も不明。いまさら地図を見たって遅いだろう。 それで、単純に考えた。この丘を、道があろうとも無かろうともひたすら真北へ進んで、帰る時は真南に戻ればいい。 リュは、真北にある大都市、「テード」を目指して真北に進んでいた。進路にズレは無い。 ひたすら丘を越えて。 「トブサン。ライのエサ、ニンジン。ねえ」 ライという名の子馬に乗って一緒に旅をしているのは、オレンジのパーカに身を包んだ少女、マーガレット・カタラ。 抱いているうさぎのぬいぐるみにも名前がある。ラベンダー・ロゼル。元は人間だったらしいが、なんらかの理由でぬいぐるみにされてしまったという。奇妙な話だ。彼女は意思が一応あり、声は出ないが会話は出来る。話したい言葉は、日記帳にリアルタイムで出ているからだ。何度考えても不思議でたまらない。 リュ達は、みんなで旅をしているわけではないが、たまたま道が同じ訳でもなさそうだ。リュ以外の仲間の、旅について目的は知らない。 暇なんだろう。 「トブサン、ニンジン、次の町で買って」 「わかったから、マーガレット。もっと別の話題はないのか?」 「トブサンが、欲しい物、全部買ってくれるまで、続く」 ああ……地獄。 マーガレットの欲しい物の中に、確か巨大ハンマーとかなかっただろうか? きっとマーガレットの事だから、普通のヤツだっ
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