ツララ国

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遠慮というふた文字は無いのか。 次々と注文を押し付けるマーガレットに何のためらいもなく頷いてみせるマヘさん。 「わかった。じゃあ、にんじんをざっと40本と、4人分のレストランチケット、私のコーヒーと娘とそのお友達にオレンジジュース、彼にはキャンディを。ああ、ソーダの弾けるヤツがいい」 ああ、大丈夫です、と止める前に対応の人がさっと頷いてしまった。 「かしこまりました。上の者を呼んで参ります」 女の人はドアを開けて、奥へ入っていった。 「いやあ、マーガレットさんかな。初めまして」 マヘさんがマーガレットと目線を合わせてしゃがみこんだ。 「おじさん、だれ」 「あはは、そうだろう。おじさんは、ビオラのパパだ」 「パパ? ビオマの? ふーん。」 マーガレットがてくてく近づいてきて、リュの腕にしがみついた。 な、なんだ? 「トブサン。この青い服のおじさん、マーの友達。家族ってことにしてるから、黙ってて、欲しい。お願い。一生のお願い」 出た……一生のお願い。 まあ確かに、それは一生のお願いだ。バレていろんなところに広まったらひとたまりもない。 「リュからもお願いします。ちょっとワケありなもので」 「ああ、わかっている。今日はツララ国の栄えある第75件目の別荘に寄ろうかと思ってな。なあ、ビオラ。」 75件目の別荘?! 一体マヘ家はいくつ別荘を持っているんだ? 「マー、一緒、行っていい?」 マーガレットが目を輝かせている。 ああ、またややこしい事になりそう……。 「ああ、いいよ。」 「ま、ま、マーガレットちゃん!」 「あ」 再会に目をうるわせるビオラ。 それを今まで無視していたマーガレット。 あってなんだよ! 「ほら、マーガレット。ビオラさんだよ?」 「うん。ひさしぶり。」 「久しぶり! マーガレットちゃん! わーあっ」 抱きつくビオラ。 苦笑するマーガレット。 もっと反応しろよ! 感動の再開ムードは片方だけ? 「大変お待たせ致しました。担当になりました、ユリバです。」 カウンターの奥から、さっきとは別の女の人が出てきた。 ストレートの髪をバッチリ腰で揃えて、前髪は真ん中で分け耳に掛けている。 この人のワンピースは、無地の灰色。格が少し上、ということだろうか。おまけにこの人は黒い、四角い帽子も被っている。 その隣から、また別の女の人……と言うよりは女の子が出てきた。長い髪を二つ結びにした女の子だ。
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