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シュウ兄ちゃんと私は2歳違いの兄妹だ。当然、小学校、中学校は同じ学校に通うことになる。どの学校でも私は”あの三吉修司の妹”として認識された。初めのうちは、妹と呼ばれて先生や先輩から優しくされることが嬉しかったし誇らしかった。だけど中学校にあがり、人並みに自意識を持ち始めると気付いてしまったのだ。誰も彼もが兄というフィルターを通してしか私を見ない。それは私自身でさえもそうだった。
気付いてしまったら、もう元には戻れない。私は慌てた。自分には兄のような運動神経も学習意欲もない。それどころか、引っ込み思案な性格をこじらせて、これまでクラブ活動にも入ってこなかった。私から兄を引いたら、何も残らない。いや、引くという表現もおかしい。初めから兄は兄で、私は私でしかなかったんだから。
だから高校は、シュウ兄ちゃんとは違う学校を選んだ。そもそも兄の学校は市内一の進学校で、私の成績では合格が危うかったので両親からも特に異論は出なかった。昔の私なら、多少無理してでも同じ高校を目指しただろうという事にも両親は気付かなかった。
ただ、その頃には莉奈が第一次反抗期を迎えていて、それどころではなかったのかもしれない。私も兄も反抗期なんてあってないようなものだったから、初めての激烈な反抗期に両親は四苦八苦していたのだ。
そうして私は北葉高校に入学した。兄の存在がない初めての学校生活。ここでなら私は、違う何かになれるだろうか。
何になりたいのかもわからないくせに、漠然とした期待だけを持っている自分がひどく滑稽だった。
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