道家雄二郎 - 何も変わらない -

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あーぁ、せっかくの公欠もとい大会だっていうのに気まずいったらありゃしない。 ここはラジオドラマ部門の発表会場だ。各学校が提出した作品CDが順番に再生されていく。俺たちはそれをICレコーダーで録音しつつ、黙々と聞いている。 隣には八代先輩、そのまた隣は秋葉だ。こっそり盗み見ると、秋葉はぶっすーとして不満げな表情を浮かべている。ったく悪うござんしたね気が利かなくて。 テレビとラジオの二手に分かれて記録をとることになり、俺はすぐさまラジオの方に立候補した。藤城は確実にテレビの方へ行くからだ。ドラマは無事完成したからといって一昨日の気まずさが消える訳じゃない。この会場に来るまでの道のりも、気まずさのあまりほとんど誰とも会話していないのだ。八代先輩や日野先輩が気さくに声をかけてくれたけど、それにも短い返事しか返せなかった。 昨日の風邪が最悪に間が悪かったよなー、あれのせいで完全にタイミングを失った。でも何度考えても俺はほとんど悪くねーしなー。やっぱ俺から謝るのは釈然としない。はぁ。 ぐるぐるとまた同じ事を考えているうちに、再生されていた作品が終わったようだ。正直、今の作品はつまらなくて全く内容が頭に入ってこなかった。というか内容以前に録音された音の大きさがまちまちでノイズも酷く、集中して聞く事が出来ない。 うちの先輩方って、かなりちゃんと作ってたんだな。結局過去の大会記録を見るなんてことはしなかったから、学校ごとのレベルのばらつきを今回初めて知ったのだ。さて、じゃあ仕方ねーから、ここは秋葉に気を利かせてみようかね。 席の入退出は基本的に、作品が終わって次の作品が流れ始める1、2分くらいの間にするのがマナーらしい。 「八代先輩、ちょっとトイレ行ってきます」 「いってらっしゃい。なんだったら他の会場も覗いてくると良いよ」 「うっす」 秋葉がもう戻ってくんなっていう素敵な笑顔を向けていた。ったく、損な役回りだ。俺はいつも中途半端に優しい奴だと思う。
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