嘘は現実に

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「あぁ、大丈夫。付き合うよ」 「ありがとう凛くん。……先に帰ったりしないでね、約束だよ?」  そう言って、雅は強く念を押す。 「そんな事しないって……絶対に」  ……約束を破るなんて、もうごめんだ。あの日の彼女のように、悲しい思いをさせては駄目だ。 あの日、彼女と約束したのだ。  ――もう嘘なんてつかない、と。  そんな昔の約束を引きずっているのかと、笑われるかもしれない。馬鹿にされるかもしれない。俺は、変わっているのかもしれない。  それでも良い。誰に何と言われようが、俺の一番大好きな彼女との大切な約束なのだ。そして、彼女と唯一の約束。破ってしまったら、二度と彼女に会えないような気がしてしまうのだ。 「ごめんごめん。凛くんはそんな事しないもんね」  そうは言うが、あの日の彼女には、そんな事をしてしまったわけであるが。 「……あれ?」  と、雅は机上のノートへ目をやると、不思議そうな表情を浮かべる。 「急にどうした?」 「えっと、凛くんがちゃんとノートを取ってないなんて、珍しいなって」  俺は真面目に授業を受ける人間だ。故に、ノートをしっかり取っている。そんな、俺の事を知っている雅からすれば、疑問を持ってしまうのも仕方がないのだろう。
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