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視界に映る信じられない光景に、俺は目を奪われた。
「誰……なんだ。君は」
そんな光景に思わず、そう呟いてしまう。しかし、目の前の少女が誰かなんて、俺が知らないはずがない。むしろ、よく知りすぎているくらいだ。
「誰って、私は凛の恋人。凛も言ってたじゃない」
ああ、やっぱり。俺の知っている彼女だ。
だが俺は、彼女が俺の目の前に居るだなんて夢のような出来事を、完全に信用しきれていなかった。
そして、不思議に感じることもあった。
おかしいのだ。彼女の姿は、俺と同い年とは思えない程に幼い。あの日の思い出に残る彼女の姿が、そのまま目の前にあるのだ。
一目で彼女であることが分かってしまったからこそ、俺は彼女であると信用しきれないのだ。
これは、あの日と同じ雪の降る日のこと。
――雪のように積もった想いは、その日から溶けることを始めた。
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