1人が本棚に入れています
本棚に追加
――――
夢を見ていた。それも、とても懐かしい。思わず俺は、自分の小指を見つめて思い出に浸ってしまう。
「今、どこに居るんだろうな。……と、今何時だ」
チュンチュンという小鳥のさえずりと、カーテンの隙間から漏れる日差しが、朝を迎えたことを知らせる。俺は枕元の目覚まし時計を手に取ると、ちょっとした安堵感に包まれた。
「なんだ、まだ7時半か」
そう言って、枕元へと目覚まし時計を戻した。アラーム設定の時刻には、まだ余裕があるから大丈夫。
そう思い、再び目を閉じたのだが――。
――ピンポーン
狭いアパートの一室に、安っぽいインターホンの音が鳴り響く。俺は起きずに居られなかった。
「はーい」
外へ聞こえるように、出来るだけ声量を上げて返事をする。正直、眠気の残る朝にこれは辛い。
こんなに朝早くから訪ねて来る人は決まっている。いつもより少々早めな気がするが、間違いない。俺は暖かい布団を愛しく感じながらも、玄関へと向かった。
施錠を外して、ゆっくりとドアを開ける。すると、そこにはやはり、いつもの見知った顔が居た。
最初のコメントを投稿しよう!