嘘は現実に

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   そうして暫く、雅の料理する音をBGMにボーっとしていたのだが――。 「痛っ」  突然聞こえた雅の声に、思わず突っ伏していた顔を上げる。キッチンに立つ雅は、指を抑えていた。 「大丈夫か……!?」  そんな姿を見てしまった俺は、居ても立ってもいられず、急いで雅のもとへ近寄る。 「ちょっと切っちゃったみたい……」  雅の人差し指からは、少し血が流れていた。大した傷では無いようなので少し安心したが、雅が包丁で怪我をするなんて珍しい。 「……傷口を水で流して、待ってて」  流石に指を咥えるなんてことは出来ず、俺はタオルと絆創膏を持ってくる。 「ごめんね」 「いいって。洗ったら、首のあたりまで指を上げて」  言うと、雅は指示通り指を首元まで上げる。俺はその指を、用意したタオルでギュッと包み込む。タオル越しではあるが、確かに雅の温もりを感じた。 「なんか、ちょっと恥ずかしいね」  えへへと、照れ隠しに笑いながら頬を赤らめる。そう、口に出して言われるとこっちも恥ずかしいんだが。 「……安い絆創膏だけど、貼っておいたほうが良いだろう」  俺はそういうと、暫く抑え込んでいたタオルを離し、雅の人差し指に絆創膏を貼りつける。こんなもんで大丈夫だろう。
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