嘘は現実に

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   あの後、雅が言っていた話とやらは結局、何だったのかは分からなかった。何でもないと言って誤魔化されてしまったが、どうにも俺は気になっていた。  やはり、今日の雅はどこかおかしいと思う。体調が悪いのだとか、そういったことではない違和感を覚えた。いつもより早く訪ねて来たのも、珍しく包丁で指を切ってしまったのも。そして、先ほどの話というのも全て含めて。  しかし、理由を考えてみても、思い当たる節はこれっぽっちも見つからなかった。  ……俺の気にし過ぎだろうか? ――キンコンカンコーン   そんな俺の思考を遮るかのように、授業終了のチャイムが教室に鳴り響く。  机に広げられたノートは、まだまだ板書の途中であった。 「凛くん」  と、休み時間早々に、雅が俺のクラスへとやって来たのだった。いくら仲が良いと言っても、都合よく一緒のクラスとはいかないのが現実。 「どうしたんだ?」 「え、えっとね……放課後は暇、かな?」  どことなく言いづらそうに、雅は話を切り出す。ウェーブの掛かった、亜麻色の髪を弄りながら。やはり、俺の気のせいなどではなく今日の雅は様子が変だと確信した。 「まぁ、暇だけど」  部活も入っていないので、そのまま帰宅というのが俺の日課。いわゆる、帰宅部。 「あのね、ちょっとだけ付き合って欲しいの……駄目、かな?」  放課後に付き合って欲しいとは言うが、基本はいつも一緒に帰っている。わざわざ、前もって確認をとったのは、何か特別な用事でもあるのだろうか。  
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