第1章

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 世界の果てが、どのような場所なのかは知っています。 私が住んでいるからです。けれど、世界の果ての意味を まだ知ることが出来ません。  ここにはお母様と二人だけで、暮らしていました。 色々な事を教わりました。読み書きとか、歌う事とか。 十一歳になるまで、誕生日は祝って過ごす事とかもです。  上の方は空と呼びます。青く奇麗で気持ち良い風は、 洗濯物を乾かすのを助けてくれます。服という纏う布は 多くは持っていませんが、寒い季節に役に立ちます。  寒い季節を冬と呼ぶのです。青い空が一面に白い空へ、 風が強くなると緑の草花も、美味しい木の実をくれてる 大きな背の高い木々も、あっという間に白く冷えます。  お母様のお墓も。寒さが心配ですが返事はありません。  冬の間は小屋で過ごします。小屋の中には服のような 布が床に敷いてあり、窓から隙間風が入らないように、 あと眠る時に暗くする為にも使う、拡がる布があります。  お誕生日は、冬が過ぎて白くなくなって、草に寝ても 冷たくない頃に、鳥や蝶々がやってくると祝いました。 お母様が最後のお誕生日をしてくれて、二回目の冬です。  お誕生日があれば、確か十三歳のはずです。            *  草花の丘に池という、透明で洗濯にも料理にも使う、 起きたら顔を洗う気持ちの良い、水が沢山あります。 魚というのが泳いでます。残念です、私は泳げません。  泳ぎ方も、釣りの仕方もお母様に習いましたが、 上手に出来なかったのです。でも樹に登り実を取るのは、 結構、得意です。鳥や蝶々は食べません。ここでは。  世界の果てというここでは、木の実だけで大丈夫だし 秋までに沢山取っておけば、冬も平気なのです。 小屋の中は寒くないです。消えない火が飛んでいるから。  それを火と呼ぶのは正しくないけれど、仕方が無いの。 お母様はそう言ってました。青く丸い透明な池のように、 フワフワと部屋の中を浮いています。熱くはありません。  私は出来なかったけれど、その丸い透明な玉の中で、 ユラユラと奇麗に光る真ん中へ、お魚を入れて美味しい、 焼き魚を作って貰いました。玉は外には出て行きません。  いつでも小屋の中をフワフワしています。寒い日には、 赤くなって暖かくしてくれます。眠る時は薄暗い青です。 お話はできないけれど、玉の火も眠くなるのでしょう。             *
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