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そういう事を、書きとめた本なのかもしれない。
見た事は無いし、草花の丘の何処へ走っても。雲の海。
逆に、そんな雲の海の事は載ってないし、木の実だけでは
私は生きていられないはず。玉の火の事も書いて無い。
これ。お母様が書いた夢のお話なのかな。私が一人で、
転んだ時みたいに泣いたりしないように。その為にあるの?
本の中が本当なのだと、だからお勉強するんだって思って。
*
次の日も吹雪は強かったのに、少しお勉強が嫌いです。
でも、お勉強はお母様との約束だから、本を読まないと。
今日はどれにしよう。この赤い本にしよう。そのとき。
突然、玉の火が純白の雪の光り方で、私の前にきて、
とてつもなく、冷たくて。氷のようになって私の頭の上で
音でも、声でもない、でも。話しかけてきました。
《それを読むの?コノノ。》
驚きました。玉の火が話しかけてるとしか思えない。
だって、私の名前【コノノ】はお母様しか知らないはず。
もし、知ってるとしたら、この小屋では玉の火だけ。
「玉の火さん!あなたはお母様みたいに話ができるの?!」
《それを読むの?コノノ。》
「どうして今まで黙ってたの?!お母様とも話せたの?!」
《それを読むの?コノノ。》
「……。この本を読むと、もう玉の火さんに会えない?」
《コノノ。あなたは誰にでも会える。会いたい人に。》
「お母様にも……?」
《それを読むの?コノノ。》
「読む。」
*
この日、私は世界という所に生きている事と、
草花の丘が世界の果てという場所だって事と、
果てではない世界は、草花の丘を百万回も周っても着けない。
ずっとずっと遠くまである大きな事、雲ではない海でさえ
その半分ぐらいしかない事や、そこに沢山の人が居る事。
冬にお外にいけない事より、難しい大変な事がある事。
仲良く出来ない人や鳥や蝶々や、草花や魚や木の実。
この本だけが本当にお母様が書いた事。
世界の果ては私にとっては、草花の丘は世界だった事。
世界の果てから出ることは簡単。但し戻る事は
二度と出来ないかもしれない。それでも、お勉強が充分なら。
本棚から三冊だけ持ち出していい。だからちゃんと読む事。
ここへ戻ってくる方法が、書いてある本は一冊も無い。
《世界へ行くの?コノノ。》
「うん。行く。」
《世界へ行くの?コノノ。》
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