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「お母様の居た町が見たいの。」
《世界へ行くの?コノノ。》
「……。お父さんっていう人が居るらしいから。」
《コノノ。本を選びなさい。三冊だけです。》
「どうしたの?!」
《コノノ。本を選びなさい。三冊だけです。》
「あ、は、はい。一冊はこの赤いお母様の日記です。」
《コノノ。本を選びなさい。あとニ冊だけです。》
「一冊は、いままでお勉強してきた、このノートです。」
《コノノ。最後の本を選びなさい。》
「……。この空白の真っ白な、玉の火のようなノートです。」
《コノノ。本当にそれで良いなら、必要な物をカバンに
入れなさい。まず、木の実を取る時のナイフです。
次に、三冊の本とは別に、机の上の絵を入れなさい。》
「ずっと知らなかったけど、これは誰ですか?」
《コノノ。その人が貴女のお父様です。》
「……。生きてるの?」
《コノノ。世界の果てより、先の事は自分で探しなさい。》
「じゃあこの小屋では、どうしたらいいの?」
《コノノ。この七色の炎。虹の球。【イデア】と共に、
外の全ての木々に礼を述べて、丘の一番高い石の柱へ。》
「玉の火さん。一緒に行ってくれるの?」
途端に玉の火は鳥の卵ほどに小さくなり、七色に燃えると
小屋の前で止まった。
*
コノノが外へ出ると冷たく寒い吹雪で、前が見えなかった。
【イデア】がコノノの首の周りで一周すると、ペンダントになった。
寒くない。中で赤く炎が燃えている。熱くもない。
全ての木々に抱きついて今までの、一緒に過ごした礼を
言って周る。全ての木々がコノノの歩く道の雪を飛ばす。
そして、最後に丘の石の円柱まで来た。
お母様のお墓はここにある。
お墓に何かが巻き付けてある。初めて見る。何だろうこれ。
丸くて、鏡のようにピカピカしている。奇麗な鎖。
《コノノ。その懐中時計を失くさない様に。》
「懐中時計?」
《コノノ。どんな時も、昼か夜か、今日か明日か。
貴女はそれを知る事が出来ます。時間を見なさい。》
「11時です。」
《コノノ。直に昼食です。行きなさい。》
「行くって……どこへ?」
その瞬間、ペンダントに引っ張られるように、
真っ白な世界の果てにある唯一の海。雲海にコノノは落ちた。
「わああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
世界の果てから、世界の果てへ。
昼食の為に、降臨。
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