智沙side

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「そう‥よかった。あっ!手、ごめんね。」 全然平気そう(実際平気)な僕を見てホッと息をついてそう言うと、 彼は僕と繋いでる手を見て慌ててそのつながりを離そうとした。 (あ‥や、やだ!!!) 「だめ‥!!!!」 咄嗟にそう言って、離れて行こうとした彼の手をギュッと掴んだ。 「え‥」 もちろん彼はびっくりした顔をした。 なにか言葉を発さなければいけないのは分かってたけど、僕はテンパり過ぎていて‥二の句が告げなかった。 沈黙が2人を包む。 僕の頭の中はぐるぐるぐるぐる‥。 沈黙を破ったのは彼の方だった。 「俺、渡辺優。『優しい』の『優』、で『まさる』って読むんだ。君の名前はなんて言うの?」 僕がギュッとしてしまった手を、彼もまたギュッと握り返してくれてそう言った。 それだけで僕は、ホッとした。
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