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「さ‥くら‥智沙‥デス。」
若干小声になってしまった。が、この名前を言うことが少々憚られたのは仕方ない。だって‥
「え、何?さくらって言った?」
この学校の名前は『咲良高等学校』。
初代咲良清さんが150年前に創立して以来、高等部、大学部という短い期間に世界と張り合うトップレベルの人材を常に育成してきた伝統的な日本きっての名門校だ。
その学校の経営は、今も変わらず代々我が家の人間によって引き継がれている。
現在の経営者はさきほどからチラチラと出てきている父親。ちなみに、9つ離れた兄が引き継ぎをすることになっていて、父親の秘書をやりながらその仕事を学んでいる。
僕はそんな咲良の人間だ。
当たり前だけど、咲良という家名はいつでもどこでも僕につきまとってきた。
今までは別にそのことについてどうとも思わなかったが今は違う。
(彼はそんな咲良の人間でも‥損得勘定無しに、仲良くしてくれるだろうか‥。)
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