第二章

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初めて‥彼女が出来たのは中学2年の時だった。 同じ陸上部でマネージャーの、一つ上の先輩に告白された。特に好きとかいうわけではなかったが、なかなかのアタックに負けて付き合い始めた。 その先輩は年上の余裕、というものもあったのか、恋人同士のなす行為への誘いもまた、あからさまで積極的だった。 先輩のそういった雌雌しい誘いに嫌悪感を抱き始めたのは、付き合ってすぐだった。 押し付けられる胸にもグロスを塗った唇にも香水の鼻につくような香りにも、 全てに対して メス を感じた。 初めてキスをした日。 帰宅してすぐ、グロスのついた唇を一生懸命に落とした。 イライラして仕方なかった。 その日以来、まるで次へのステップを望むかのように誘いは過激なものへとなっていった。 下校の度、公園で深いキスをせがまれた。 別れるとか、誰かに相談するとかそういう選択肢は当時頭になかった。 先輩とのやりとりに不自然さを出さないようにするだけで精一杯だったし、自分でも自分がよく分からなかった。その時の感情、衝動が。 先輩とキスをする度、帰宅して唇を洗うのが日課だった。 そして、いつからだったろうか。 先輩とのキスがいっさい記憶に残らないようになったのは。
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