序章[特殊部隊の名誉と忠誠]

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2014年 カザフスタン PVS-14を通して見る世界は緑色だ。全員がヘルメットに装着している、このアメリカ製の単眼暗視装置は人気有る装備品だ。 稜線を避け、岩肌を進む兵士達はタクティカル・パフォーマンス製のマルチカム迷彩服を着用している。それは僅か5人の集団だが、集団の動きは洗練されていた。 無人偵察機の情報が彼らの移動をスムーズにしていた。最後尾の隊員が携えるMP5Fは既に装填済みだ。切り替えレバーこそ引き金を固定する位置で止まっているが。 音も無く、彼らは走る。目的地まで敵は居ない――無人偵察機は偉大だ。目で見えない高度を飛行するRQ-4グローバルホークの電子の目が闇夜の周辺地域を監視しているはずだ。 PEQ-15の赤外線ライトで照射、肉眼では見えない光源を頼りに行く。 「――コンタクト」 行き足を止め、先頭の兵士が構えたHK417。それに載せられたシュミット・アンド・ベンダーのスコープの前には暗視装置が居座る。 その高級品の照準器達が目標の建造物と、周囲に立つ見張りを捉えた。シュミット・アンド・ベンダー製のスコープを覗く為に跳ね上げたPVS-14はOPS-CORE製のヘルメットを重くするだけの錘となる。 「距離500、撃て」 HK417の切り替えレバーを小さく回転させ、発砲可能にする。彼はそのまま位置に着き、他の兵士は進む。ゴーグルで覆われていない部分への風当たりは冷ややかだ。 「了解、撃ちます」 釣り目の兵士が二脚を使い立てたHK417に装填されている7.62mm×51弾は800m以内の狙撃では確実に使命を果たす性能を持つ。
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