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“必ず阻止しろ”
彼はその言葉を忘れていなかった。仲間2人がAKMを構えドアの前で待ち構える時から、既に覚悟は決めていた。
「カザフスタン――ロシアの特殊部隊か!?」
「判らん!」
同志達が武器を手に迎撃を試みる中で、彼は旧世代の大きなパソコンや写真、地図を見回した。
人生の最後を見送られるには無機質な連中だ。韓国製のタブレットだけが時代に着いて行く。
「早く、裏口から脱出を!」
「――無駄だ」
白人の中年男性が着用するベストに目をくれず、仲間はドア口に銃口を向けた。
2人の仲間に、仲間意識はなかった。AKMを向け、静かに突入を待ち受ける。
着用したベストから伸びた紐に人差し指を掛け――その直後、視界が真っ白になった瞬間、反射的に引き切った。
顔面に被弾した彼が役目を果たしたのは、固い決意によるものかも知れない。
二階建ての木造建築、その一角が爆発する光景を狙撃手は驚愕の面持ちを見せた。
爆風は階段から兵士らを突き落とし、薄い壁ごと人体を破壊する。
「クソッ、ふざけんな!」
「大丈夫か!?」
下の階まで爆煙が立ち込める。映画のガソリン発破の様な炎は無く、ただ衝撃波が貫けた。
二階から階段を転がり落ちた兵士2人が、ヘルメットで保護された頭を押さえながら立ち上がる。
鼻血を流しながら二階を確認すると、廊下から最後の部屋にかけて激しく損壊していた。
部屋も、人間も。変形して転がるMP5Fを蹴り、悲劇的な事実を確認して歩く。
「――やられた、撤収する」
耳鳴りや脳震盪と戦いながら、彼ら3人は回収地点に向かった。国籍標識の無いV-22オスプレイが、彼らを手際よく回収。作戦は終了した。
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