第二話 地下三階

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P-02 エレベーター内に振動。 全身にグッ、と重力がかかり、エレベーターが止まる。 光源が手に持ったライトの明かりだけで、真っ暗だったエレベーターのドアが、開いた。 「………………」 けど、開いたドアの外に見える風景もまた、薄暗い。 ドアが開いた先には通路が見えた。 人が三人並んで歩くには少々厳しい位の横幅で、天井までの高さもあまり無い。 床も壁も天井も、全てむき出しのコンクリート製。 天井にはライトが付いているけど、光が弱い上に何故か一個飛ばしで点いていて、その中途半端な明るさが逆に不気味に見える。 「……どうする? 降りる?」 会長さんが皆にエレベーターから降りるかどうか聞く。 『………………』 誰も何も答えない。 降りる事が正しいのか、このままでいた方が良いのか。 誰にも判断がつかないのだ。 (…………いや、わかってる) このままここに居ても意味が無い事なんて。 上の階でドアを叩いて僕達を驚かして、このエレベーターを動かした何者かは、ここで降りる事をきっと望んでいる。 乗り続けていればまた上に戻ってそのまま帰れるだなんて、そんな都合の良い話は無いだろう。 「降りましょう」 皆に僕が言う。 「きっとこのまま乗り続けていても、意味無いですよ」 「…………うん、だろうね」 会長さんが頷く。 「皆、降りよう」 会長さんの言葉に従い、恐る恐るエレベーターの中から皆が出た。 そのまま先頭を歩き出す会長さんに、皆が無言で付いて行く。 壁に書いてある文字には『3F』とあった。 ……絶対に嘘だ。 エレベーターに乗っていた時の感覚からすると、三階層分以上深く下りている。 その後フロアを見て回ってわかった事は、この階はそんなに広くなくて、構造も単純だという事。 僕らの乗ってきたエレベーターから直線に一本道が伸びて、真ん中に十字路が一つ。 階の構造は上から見れば、漢字の『十』の字になっている。 そして、乗って来たエレベーターの真向いの突き当りにドアが一つ。 十字路の左右に曲がった先、中程にそれぞれ、向かい合う様にドアが一つずつ。 つまり、この階にはエレベーターのドアを除けば、ドアは五ヶ所あった。 ―――→[3]ページへ  
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