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最終的に反抗を無駄に感じた秀くんが了承して再婚って形になったんじゃなかったか?
莉奈子ちゃんは同じ年代の子よりも顔も身体つきも大人っぽい子だった。急に出来た妹に戸惑いを隠せないながらも、秀くんは大切にしていたし可愛がっていた。
当時、秀くんは専門学校を卒業して、市内に幾つか店舗のある美容室で働き始めていた。向こうの家で一緒に暮らさなかったのは、秀くんなりの気遣いだったんだと思う。
週末やイベントごとに手土産を持って行く秀くんは、母さんの幸せを誰よりも喜んでいたはず。
そうやって大切にしている妹だから、俺たちにとっても大切な友人になっていったのに。
二人にどんな想いがあって、どんなきっかけだったのかは知らないけれど。
桜の花が満開になった頃、
秀くんは莉奈子ちゃんを連れて
この街からいなくなった。
連日降り続いた春の雨に打たれて桜の花びらが落ちてしまったある日、怒りに震える莉奈子ちゃんのお父さんと見るも辛くなるほどの心労を滲ませる秀くんの母さんが俺を訪ねて来た。
当時俺は航平の家に居候していた頃で、話を聞いて慌てて掛けた携帯電話は秀くんに繋がることはなかった。
他の友達と遊ぶ約束が幾つか重なっていて、会わなかった数日のことなのに。
飛ばされた凧の行方を追いかけるような日々は甘ちゃんの俺の精神を簡単に痛めつけた。
ずっと一緒にいた人間が
これからもずっと一緒にいると信じていた人間が
ある日突然、何にも言わずに目の前から消えたんだから。
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