anniversary

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左右に動くワイパーの速さと、とめど無くフロントガラスに打ち付ける雨の粒たち。 ラジオの声に被せてくる無線の声の忙しさは後部座席にも届いた。白いシートには外灯に照らされた雨粒が影になって流れていく。 止む気配のない激しい雨のせいで駅前はタクシーを待つ傘の長い列ができていた。 寿々子が持たせてくれたタオルを首に引っ掛けて、タクシーを待たせて地下へと続く階段を降りていく。 重いドアを押すと、フワリと花の香りがして、ロウソクの柔らかいオレンジの光が薄暗い店内のあちらこちらで揺れている。 「雨、すごいだろ?悪かったな」 ひょっこり出てきた顔に頭を下げてから、首に掛けたタオルで拭って奥へと進む。 壁には一面に並ぶキープボトル。淡いグリーンががった気泡の入ったガラスのペンダントライトは独特な雰囲気でカウンター席を照らしていた。 外界の騒がしさを感じさせない静かなココは秀くんのお気に入りの場所の一つで、彼はカウンターに伏せて眠っていた。 「アイツ、何かあった?ウチに来る前から飲んでたみたいでさ…。 止めたんだけど聞かなくて、結構飲んでんだよ」 いくちゃんの話だと、莉奈子ちゃん本人が秀くんと話をしているらしいから…… 過去の話も含めて、いろいろあるのかも知れない。 「あー。俺にも、わかんないっす…」 「お前も知らないんなら、大したことじゃないのかもな」 マスターの浜野くんはカウンターから出て秀くんの肩を揺らした。
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