anniversary

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「俺のことはほっとけや」 目の明かない秀くんがシッシッシッと手先だけで払う。 「外はスゲェ雨なんだって。お前飲み過ぎて歩けねぇだろ?わざわざ大翔に来て貰ったんだよ」 俺の名前に反応して、肩に置かれた手を振り払うように勢いよく腕を挙げた。 血走った目玉はカッと見開いていて、明らかにいつもの秀くんとは違う。 「お前も…お前も、ウンザリなんだよ」 スツールから腰を上げた秀くんはふらつく足取りで浜野くんの身体を押し退ける。 「秀くん飲み過ぎてるよ。今日は帰ろうよ、送るから。」 他のお客さんの視線を集めてきていて、早く帰らなきゃちょっとした騒ぎになりそうだ。 「とりあえず、ココを出ようよ。上にタクシー待たせてあるから」 「お前だけ帰れよ。寿々子が一人で待ってんだろ」 フラフラする足どりで出口へと向かう秀くんの後を追いかけてドアの外へ出た。 手摺に捕まらないと階段すら登れないくせに。 よろけた拍子に翻りそうな身体に手を伸ばす。一人で抱えきれないほど悩んでるくせに。 「何だよ、離せよ」 どうして何にも話してくれないんだよ…目を合わそうとしないし、突き放す態度が気に入らない。 「いくちゃん、今日も来たよ。莉奈子ちゃん、結婚するんだって?」 口角が意地悪く上がった俺と階段の途中で睨み合いになった。 地上の全てを打ち付ける雨音は煩くて、排水溝から溢れた水は行き場を失い地下へと続く階段を流れ落ちていた。 傘の群れが右往左往する度に、お互いの顔に影が映る。
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