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明るい茶色に金色のメッシュが入ったウェーブヘア。ド派手な色をした凶器にもなりそうな長い爪。エステ三昧らしい滑らかな肌。
一瞬にして弱点を見抜く洞察力と真夜中に思い出したら二度と眠れない怪しく濡れる真っ赤な唇。
内心、俺は絹子さんが苦手だ…。
昔から、岩男みたいな風貌でガツンと叱る航平の親父さんよりも、全てを見透かしたように静かに微笑む絹子さんの方が何倍も怖かった。
「最近なーんか、コソコソしてるでしょ?」
籠から取り出したレモンは手から滑るように弾む。ニヤリと片方だけ上がる唇に目を見張りつつ、身震いと一緒に頭を左右に何度も振る。
「そう?ま、いーけどね」
蛇に睨まれては手元が狂う。
短く息を吐き出してからザクリとレモンに包丁を入れれば、鼻からの刺激臭で口内に溢れてきた唾液を飲み込んだ。
「アイツ、店閉めてるのよ。今日は休みじゃないでしょ?昨日もその前も飲み明かしてるみたいだし…」
ロンググラスには氷とレモンスライスを一枚。中をくり抜いて器にして絞った果汁を戻し入れて蓋をした。
「何をやってるんだか…」
絹子さんの前に運ばれたシルバーのトレイ。寿々子が空のグラスにキンキンに冷やして置いた炭酸水を注ぐ。
絹子さんはパチパチと弾ける泡に目を細めて、待ってましたとばかりに果汁の入ったレモンをそっと傾けた。
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