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そこは灰色の世界だった。
泥の丘に剣が数本刺さっていた。
だが、空も剣も地面も全てが灰色だった。
まるで世界そのものがお前はこの世界には相応しくないといってるかのようにーーー。
存在が曖昧なお前にはこの世界に色はつけられないーーー。
そのとおりかもしれない■■■■はこの世界の人間じゃない。
確かにこの世界で起きる出来事は多少は知っている。
それこそ世界が滅びるかもしれないほどの事件だって知っている。
けど、俺にはなにもできない。
正義の味方のように俺は強くない。
背後を見ると黒いナニかがいた。
力が欲しいかーーー。
何をいっている?
力が欲しいか。それを手に入れればお前はお前自信の理想を叶えられるだろうーーー。
いや、そんな力は要らない。この理想は自分の手で叶えるものだ。お前なんかの手助けなんて必要ない。だから、さっさと消えろ。
わかった。だが、忘れるな。俺はいつでも待っているーーー。
いいさ。どんなことになってもお前だけには頼らない。例え俺が死にかけても…な。
あれは夢だ。
死が蔓延した中で俺が見た夢。
『灰色の剣の丘』
それは俺が憧れたあの人の世界と酷く酷似していた。
ー冬木市のとあるアパートー
「な~にボーッとしてんの?」
「いや、別にちょっと考え事をしてただけですよ。」
この人の名前は蒼崎青子。
俺を引き取ってくれた人であり、俺を救ってくれた人でもある。
彼女は魔術師らしい。
最初こそ信じることはできなかったが。
あの災害の顛末を知っていたのだから、魔術師なのはあたりまえだと思い納得することにした。
「ずっと思ってるんだけどさ。その他人面の喋り方止めたら?」
「何故です?年上に敬意をはらうのは当然では?」
「あんたみたいな子供に敬意はらわれるほど私はできた人間じゃないわよ。結局、あの中から助け出せたのはあなただけだったんだから。」
吐き捨てるように彼女は言う。
「それに…貴方は私の家族よ。大切な私の弟。」
まるで聖母のような微笑みを俺にあててくれながら彼女は言った。
「えっ?」
動揺を隠せなかった。
この人は何故俺に笑いかけてくれるんだ?
「貴方はあの災害で地獄を見たのよ。だったらもう苦しむ必要はないの。もう貴方からなにも失わせはしない。だからーーーーもう泣かなくてもいいのよ?」
そうか。
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