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「だって君、ずっと物置に居たのに、どうして着替えてるんだい?」
あっ、と凛が声を上げる。
「答えは簡単だ。君は子子子を殺した時に、返り血を浴びてしまったんだ。君は慌てて自分の部屋に戻り、着替えてから物置に戻ったのだ。違うかい?」
「違いますよ」と、ボクは目を逸らしながら答える。
「…凛の元に駆けつけて、子子子子さんの死体を発見した後、着替えに行ったんですよ」
「最寄君。君が邪答院君と会った時、この服を着ていたのかい?」
凛は俯いて、しばらくした後「…ごめんなさい、覚えていません」と答えた。
「そうか。いや無理もない、子子子の死体を見て気が動転していたのだから」
「それだけですか?たったそれだけの理由で、ボクを犯人だと言うんですか?笑わせてくれますね。そんなの、ただ自分の都合のいいように解釈しているだけじゃないですか」
「では、君はどうしても犯人ではないと否定するわけだ」
「当然です。そんなにボクを犯人だと言うのなら、確実にボクだと言う証拠を出してください。それが出来ないのなら――」
「子子子がダイイングメッセージを残していた」
ボクは顔を強張らせる。
「ダ、ダイイング…メッセージ…?」
「あぁ、何て書いてあったか、分かるかい?」
凛が俯いて、震える。
「アルファベットで『K』と書かれていたよ」
ボクは動かない。
「僕等三人の中で、『K』の頭文字を持つ人物は、一人しかいない」
いいぞ、追い込め。
「何か反論はあるかね?ないのなら…」
そうだ、そのまま、自分を信じろ。
「お前が犯人だ、邪答院 誰何」
「い、いい加減にして下さい!!」
バンッと凛が机を叩いて、立ち上がる。
「誰何クンはそんなこと…そんなことしません!」
そう言って、嫩さんを睨みつける。
「…無理もない、君と邪答院君は仕事仲間なのだからね」
そう言って、嫩は立ち上がる。
「…だったら、確認しようじゃないか、最寄君。僕の推理が正しければ、彼の部屋には返り血にまみれた衣服があるはずだ」
「………」
凛が、ボクを見る。
「私は、誰何クンを信じています。分かりました、行きましょう」
そういって、凛と嫩さんは食堂を出て行った。
ボクはその場に残る。
ゆっくりと、息を吸って、吐く。
天井を見上げ、考える。
これでいい。これでいいんだ。
これが最善策。
よくやった、嫩二束。
お前は立派に探偵を演じたよ。
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