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「つまり、凛が回り道に成り変わって朝食を取り、談笑をして、回り道の部屋に戻る。それから昼まで待機し、そして絞殺。後は服を着替えさせて、部屋から出る。なるほど、不可能ではないな」
冷は煙草に火を付ける。
「で、殺した理由はなんだ?」
「理由があれば、人を殺していいんですか?」
冷が睨みつけてきたので、ボクは苦笑する。
「冗談ですよ。なに、簡単な事です」
「なんだよ」
「嫉妬ですよ」
「はぁ?」
「ですから、嫉妬です」
「前日の夜、凛は回り道さんがボクを押し倒しているところを目撃しています」
「あー…なるほどねぇ」
冷はニヤニヤしながら、「罪な奴だ」と言った。
「なるほどな。分かった。それじゃ、次は子子子子 子子子の殺害だ」
「これこそ、簡単ですよ。子子子子さんの部屋に入って、心臓を指して殺す。そして悲鳴を上げて第一発見者を装えばいいんです。 『私、思い出したんです。誰何クンのこと…』とでも言って、中へ入れて貰ったんでしょう」
「そういうことじゃない」
冷は煙を吐く。
「子子子子の死体にはナイフの刺し傷を更に広げたような痕があった。ただ殺すだけなら、心臓を一突きでいいだろう。それから、ダイイングメッセージの『K』。凛が殺したってんならなんで『K』なんだ?」
ボクは「あぁ」といいながら、答える。
「それ、やったのボクです」
冷が煙草を落とす。
「やった、って…お前、なんでわざわざ…」
「仕方なかったんですよ。そうしないと、凛がやったってバレてたんです」
冷は首を傾げる。その姿は凛とよく似ている。
「子子子子さんは最初…ボクが見た時、血文字で『りん』と書かれていたんです」
「………」
「だから、ナイフの傷口を開いて血を流し、そのダイイングメッセージを消しました」
「そして『K』という新たなダイイングメッセージを作ったわけか」
「えぇ」
「服を着替えたら、バレるに決まっているだろう」
「ボクが犯人だと思われた方が都合がよかったですし」
「凛を守るためにか」
「他に理由がありますか」
冷がボクの目を見る。
「お前…逆上した嫩に、殺されていたかもしれないんだぞ」
「それなら、それでよかったんです」
ボクは間を置いて言う。
「凛さえ守れれば、後はどうだっていいんですよ」
沈黙。
やがて「凛の為なら、お前は俺だって躊躇いなく殺すんだろうな」と苦笑した。
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