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6
「やぁ、こんな遅くにごめんねー。ちょっと喋り足りなくてさ、聞いてるだけでいいから、付き合ってくんない?」
猫屋敷誕生祭初日午前一時、猫屋敷さんが眠いからまた明日、ということで皆が自室へと戻ってから三十分。就寝の準備を済ませ、寝ようとしていたボクの部屋にリズムよくノックをした回り道さんはそう言った。
睡眠時間が減るが、別にそれが問題になると言うわけではないので(元々生活リズムは不規則なのだ)、「構いませんよ、どうぞ」と部屋の中へ招いたのだ。
テーブルの近くにあった椅子に座らせ、回り道さんはワインボトルを持参していたので(名前は忘れた。酒に興味はない)、部屋に用意されていたグラスを手渡してベッドに腰掛けた。回り道さんはありがとうとそれにワインを注いだ。
その後回り道さんは、友達の話に始まり自身のプライベートなことまで、とにかく喋り続けた。
内容はと言うと、嫩さん達の政治談議よりはまぁ、面白くはあった。
一時間半経過、聞き手に徹していたボクにそろそろ限界が来ていた。
元々は、ボクが寝ようとしていたところに回り道さんが現れて、今こうして話を聞いているのだ。
つまり、眠たくなったのである。
「あの、回り道さん」
「んん?なんだい?」
「えっとですね…その話、まだ続きますか?」
「続くけど?」
回り道さんが小首を傾げたので、ボクは正直な事を話した。すると回り道さんは、途端に呆れた顔で語りかけてきた。
「あのさぁ、君…なんであたしがこんな夜中にまで押しかけて来たのか、分かってないの?」
「なんでって…話足りないからじゃないんですか?」
顔を手で覆い、はぁーっと露骨にため息をつく回り道さん。
「だったら二束っちや子子子っちを誘えばいいでしょ?」
「いや、そうですけど…」
回り道さんの言っていることが、分からない。
回り道さんは立ち上がる。
「なんでこんな夜遅くに、わざわざ男の子の部屋に飲みに来たのか、分かってないの?」
彼女の言っていることが、分からない。
彼女はボクに近づいてくる。
「なんでわざわざ、邪答院 誰何君の部屋に飲みに来たのか、分かってないの?」
言っていることが、分からない。
分からない、分からない、分からない。
彼女はボクの目の前にいる。
ボクをベッドに押し倒した。
「本当に?」
ボクは目を逸らす。
本当は、初めから分かっていた。
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