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別に鈍感な訳ではない。むしろ、そういった他人からの評価には敏感な方だ。
初めから、分かっていた。
分かりきっていた。
本当に、初めから。
それこそ、出会った時から。
「あたしはね、君のことが好きなんだよ」
彼女はボクの顔を両手で押さえる。
初めてあった時からボクは。
ボクは、ボクは、ボクは、ボクは。
彼女の顔が近づいてくる。
ボクはボクはボクはボクはボクはボクは。
初めて会った時から、ボクは。
ボクは。
似ているなぁと。
そう思ったのだ。
扉が開く。
「誰何クンー、こんな時間まで起きてたらまた身体壊しちゃ――あっ」
目を擦りながら現れたのは、最寄凛。
凛が、ボクの目を見る。
ボクが、凛の目を見る。
どれぐらいの時間が経ったのだろう、回り道さんがボクの顔から手を離した。
「明日、答えを聞くから」
そう言うと、部屋から出て行った。
凛はもう、いなかった。
部屋に一人、ボク。
おいおい、なんだよその顔は、凛。
まるでそれじゃあ――。
「本当、似ているなぁ」
以上、回想終了。
7
猫屋敷追悼祭、午後一時。
昼食の時間になったので、ボクは具合が良くなったと言う凛を連れて食堂へ向かった。
「最寄君、具合の方は大丈夫かい?」
「はい、猫屋敷さんが亡くなられたことはショックですけど…元気なのが私の取り柄ですからね」
「それは良かった」
凛はにこりと微笑む。凛はボクや家族以外との会話では、自分のことを凛とは言わない。
本人曰く、外交モードらしい。
ボクは自分の席に座り、凛はボクの隣に座る。
嫩さんと凛が話をしている。仕事の話だろうか、仕事熱心なやつだ。
まるで他人事のように思いながら、ボクはボーッと用意された皿を眺めていた。
8
「いくら何でも遅過ぎるわ」
現在時刻、午後一時十五分。
切り出したのは子子子子さん。
嫩さんと凛は既に話を止めており、皆で回り道さんを待っていたのだった。
「彼女のことだ。二度寝でもしてるんじゃないのか?」
「起こしに行きますか?」と、凛。
「なら、ボクが行きますよ」
そう言って立ち上がる。止めようという人は誰もいない。
食堂を出て、階段を上がる。
回り道さんには、答えを出さなければならない。
部屋の扉をノックする。
返事はない。
「回り道さん」
もう一度、ノックをする。
「回り道さん、昼食の用意が出来ました」
返事はない。
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