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展覧会のある度に絵を描き、出展し続けた。
大学で三年間、更に海外へ留学し二年間。
彼女が勉強している五年間、ボクは絵を描き続けた。
凛から帰国するという連絡を貰う頃には、それなりの知名度を得ていた。
絵の買い手がつく事もあったし、作品集も出させて貰った。
空港で凛と会う。
身長はあまり変わらないが、髪が伸び、顔も凛々しくなっていた。
五年分、成長していた。
「久しぶり、凛」
凛はボクに近づくと、ボクの肩を掴む。
「誰何クン!久しぶりだね五年ぶりだね!私がいない間に有名になっちゃってよかったよかった万々歳だよ!そうそう、作品集見させてもらったよ、なに?あの下手くそなデザイン。誰が担当したの、センス無さすぎ。誰何クン、ちゃんと本出すときは考えないと!どうせ適当にやってもらってたんでしょ!?」
「ごめん」
「ごめんで済むかー!」
その後十分程説教を受けたボクは、彼女にこう切り出した。
「あのさ、凛」
「俺と一緒に、仕事してくれないか?」
彼女は目を丸くしていたが、やがて。
「もちろん!この凛がマネジネントするんだから、誰何クンには世界に羽ばたくトップアーティストになってもらうからね!」と、満面の笑みで返してくれた。
凛がマネージャーになってから半年。面白いように物事が進む。
大量に仕事が来るようになり、知名度はうなぎ登り。美術館と協力し何度も展覧会を開いた。
ボクが五分程で描いた落書きを、凛が数十万で取引してきたときには、何か悪い事をしたような気持ちになったが。
まだまだこんなものじゃない、今度は海外での展覧会の企画を立ててると、凛は言う。
彼女の実力は確かなものだった。
ボクが絵を描き、凛がそれをマネジネントする。
それがボク達の関係なのだ。
それだけでしか、繋がる事が出来なかったのだ。
11
そういや今回の一件は、凛が始めて開いたボクの展覧会で、回り道さんに気に入られたことから始まったんだよなぁ。と考えていると、廊下から声が聞こえた。
「キャアア!」
手を止める。
間違えないようのない、凛の声。
「凛!?」
扉に駆け寄り、開けようとするが、
外側から鍵が掛けられているため開かない。
「ちっ、くそぉっ!」
力任せに扉を蹴りつける。脆くなっていたのか、三回ほどで扉の金具が外れた。
そのまま廊下へ飛び出して、凛の方へと駆け出す。
「凛!どうした!?」
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