蟋蟀

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 僕は木戸君の後をコッソリ尾けてみる事にした。 そうすれば彼に付いて何か判るかも知れない。 事故や事件に妙に詳しく、探偵気取りな態度の秘密が…。 尾けるなら、施設の誰もが寝静まった夜中しか出来ない。 日中は子供達や先生達の目があるから怪しまれてしまう。  午後17時を知らせる鐘の音が施設の外から聞こえて来た。  施設では夕食の時間だ。  『夕食の時間になりました、施設の皆さんは、速やかに食堂に集まって下さい』  先生のアナウンスの声だ。 火災で厨房は燃えてしまったと言うのに、どうやって先生達は夕食を用意したのかは疑問だけど、 一刻も早く食堂に行かなければ、木戸君や花山さん達に会話を聞いていた事がバレてしまう……。 足音を殺して僕は洗面所へ向かうと、蛇口の冷たい水で手を洗い、備え付けの消毒液で消毒する。 ふと鏡に映る自分の顔を見る。 火災の事で相当ストレスが溜まっているのか、まるで僕の顔じゃないように酷くやつれている。  誰だよ君は。  冗談めかして鏡の男に訊ねてみるが返事は返って来なかった。当たり前だ。僕自身なんだから。
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