蟷螂

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 木戸君達に感づかれないように、ゆっくり、ゆっくり後を追う。 離れ過ぎないように、近づき過ぎないように絶妙な距離を保ちがら、 早く女子達から離れて欲しいと頭の中で何度も呟く。  木戸君は花山さんや野田さんを個室に送る積もりなのか、女子の名前が書かれた表札のある所まで歩いている。  「じゃあ、また明日ね。お休み」  花山さんはそう言うと自分の部屋に入って行った。 女子達もそこでピタリと足を止めたので、僕は、とっさに身を隠せそうな場所を探し、そこに身を寄せてやり過ごす。 心臓がバクバクする。呼吸が荒くなる。ゴクリ。周囲に聞こえるんじゃないかと思うような大きな音を立てて、唾液が喉元を通り過ぎる――。 もう少しで木戸君一人になるんだ。 もっとスムーズに彼の事を調べる事が出来るようになる。 後、もう少し…。 後、もう少しだ。 壁の窪みから頭を少しだけ覗かせて、木戸君の様子を伺う。  「私も、木戸君も気を付けてね」  「うん、野田さんも…」  野田さんも自分の部屋に戻り、木戸君の周りにいた女子達は次々と部屋に戻っていき、遂に木戸君一人になった。
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