12人が本棚に入れています
本棚に追加
木戸君達に感づかれないように、ゆっくり、ゆっくり後を追う。
離れ過ぎないように、近づき過ぎないように絶妙な距離を保ちがら、
早く女子達から離れて欲しいと頭の中で何度も呟く。
木戸君は花山さんや野田さんを個室に送る積もりなのか、女子の名前が書かれた表札のある所まで歩いている。
「じゃあ、また明日ね。お休み」
花山さんはそう言うと自分の部屋に入って行った。
女子達もそこでピタリと足を止めたので、僕は、とっさに身を隠せそうな場所を探し、そこに身を寄せてやり過ごす。
心臓がバクバクする。呼吸が荒くなる。ゴクリ。周囲に聞こえるんじゃないかと思うような大きな音を立てて、唾液が喉元を通り過ぎる――。
もう少しで木戸君一人になるんだ。
もっとスムーズに彼の事を調べる事が出来るようになる。
後、もう少し…。
後、もう少しだ。
壁の窪みから頭を少しだけ覗かせて、木戸君の様子を伺う。
「私も、木戸君も気を付けてね」
「うん、野田さんも…」
野田さんも自分の部屋に戻り、木戸君の周りにいた女子達は次々と部屋に戻っていき、遂に木戸君一人になった。
最初のコメントを投稿しよう!