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女子の部屋が消灯され、蟋蟀苑の明かりも消され、遂に頼りない非常灯だけがぼんやりと灯り、
廊下は一層と寒くなったように感じる。木戸君の背中からは、何か唯ならぬ得体の知れない気配を覚える。
僕は気圧されないように一歩、また一歩と歩みを進める。
背後から誰かの足音が聞こえるけれど、蟋蟀苑の夜警さんが夜間の巡回をしている音だろうか。
違うみたいだ。足音が途中で止まらないブツブツと声が聞こえる。
「計画は巧く行ったようだ」
「今の所、誰にも知られていない」
「草刈には注意を」
「我々の事を探ろうとしているらしいぞ」
「――――!」
複数いるようだ。
夜警さんでは無い、恐らく施設を脱走した子か。卒業生が僕達が寝静まったのを狙って施設に侵入したのだろうか。
厭、侵入者がいたのなら先に気付かれる筈だ。という事は元からこの施設に潜伏していたと考えるのが自然だろう。
それに計画って何だろう。
僕に放火の罪を着せるのが計画なのか……。
僕をマーキングしているみたいだし。
薄暗く不気味さを増した廊下で、背後から刺すような視線を感じる。
怖くて後ろを振り向けない。
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