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木戸君は彼らが僕達の後を尾行している事を知っているのだろうか?
知っていて後ろを振り向けないのだろうか、此方を振り返る素振りを見せる気配もなく黙々と廊下を歩き続ける。
薄ぼんやりと灯った非常灯の明かりに照らされた木戸君は、どこか幽霊のようだ。
背後から囁く声が怖くて振り返れない儘、体をカチカチに硬直させて木戸君の後を付ける。
木戸君は廊下を突き当たりまで進むと、手前の硝子戸の扉の 前で立ち止まりカチャカチャと音を立て始めた。
あそこの扉は、火災で閉鎖になった厨房じゃないか。
彼は厨房の扉を無理矢理開けようとしている風に見える。ピッキングだ。どこでそんな特技を覚えたのか。
堂々と厨房の扉を開けると、スタスタと入って行く。
木戸君が僕と同じ目的地だなんて、これでは僕が厨房に入れないじゃないか。
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