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「あった…」
木戸君は遂に探していたものを見つけようだ。けれどそこから動く気配を見せない。一体彼は何をして……、
「No.01阿久津…、 No.02井上…、
No.03上田…、
No.04小田…」
聞き覚えの無い名前を棒読みし始める木戸君だけど、誰の事だろう。
ひょっとして、
この施設を卒業したか、脱走した子の名前なのか。
「必ず見つけ出してやる…」
木戸君がそう言うと同時にクシャッと紙を丸める音がした。
ノートだ。木戸君が探していたものはノートだったんだ。
コツコツと靴を鳴らしながら出入り口の方に向かって来る。
「――――!」
見付かる前に此処から退却しないと、僕が何をされるか判らない。気付かれないようにソッと後ずさりをして厨房を後にしようとするが、
拍子で足を踏み外して尻餅をついてしまう。
「ん…?」
扉の方を横切った木戸君の酷くやつれたか顔が、一瞬こちらを向いたように見えたけど、
僕は巧く動けないゴキブリみたく倒れた儘、自分の部屋まで必死に逃げるしか無かった。
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