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「彼処に何かいたの?」
先生の質問にどきりとする。確かにいた。木戸君と数名、得体の知れない誰かが。
「蜘蛛か何かがいたようだったので…逃げ回ってて」
言えなかった。
木戸君がノートを見つける為に厨房に忍びこんだ事も、僕の背後から得体の知れない誰かが尾行していた事も。
でも不思議だった。
先生はこんな施設で僕達の面倒を見るのが怖く無いのだろうか?
「あの、先生は、怖くないんですか」
布団に身をうずめた儘、先生に訊いてみる。
「私も、怖いと思う時はある…」
そう思うのは僕だけじゃないようで、少し安心した。
「そうなんだ。でも何故、此処にいるんです?」
怖いと言いながら、此処から逃げ出そうとする素振りを見せない先生は、きっと先生なりに何か理由があるんじゃないだろうか?
それを訊いてしまうのは野暮な話かも知れない。と、判っていても気になって仕方なかったので訊いてしまった。
「何故か?」
「…………」
先生は布団の外で、意図的に間をおくように暫く沈黙すると再び口を開いた。
「それは草刈君始め皆の事を守ってあげたいって思うから、逃げ出す訳にはいかなくて……」
守るって…、
何から僕達を守るんだろう。木戸君? とその仲間? 正体不明の集団? 疑問しか浮かばなかったが、僕は布団の中で先生に小さく呟いた。
「僕…、凄く怖いです」
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