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「浅丘って誰?」
僕は分けが判らなくなって先生に訊ねたが、答えたのはその浅丘という人物だった。
僕から見ると、豹変した木戸君だが。
「お前は何も知らないんだな草刈…この施設は“多重人格者”を作る為の研究ラボなんだよ」
浅丘拓也は唐突な言葉を使って説明した。
“多重人格者”だとか“研究ラボ”だとか。
「先生…どういう事?」
僕は、床から立ち上がり先生に再び訊ねるけれど、
「…………」
先生は依然として黙った儘だ。僕から目を伏せて、口をグッと真一文字に結び、掌を強く握って立ち尽くしている。
「俺達は此処では“孤児”として預けられているが、実は、多重人格者を作る為のモルモットだったって訳だ」
僕達が? モルモット?
「何で僕達がそんな事を……」
「理想の人間を作る為には、幼い頃から人格形成を植え付けられる。皆が過去にした苦しい経験は全て此処で起こった出来事だ」
益々訳が判らない…僕や他の子達が人格形成とやらの為にそんな酷い事をされて来ていたなんて。
浅丘は何を根拠にそう言ったのだろう?
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