蟋蟀苑

蟋蟀

　施設の中の僕達の部屋は、別々にされているが、日中は子供達が自由に交流出来るようになっている。

夜は皆個室に戻って就寝するけれど、こっそり起きて動き回ったり独り言を言ったりする子もいる。

恐らく、火災が起きたのは、その間の時間だろう……。

　木戸君の部屋から声が聞こえる。

　「建物で火災が起きやすい場所は火を頻繁に使う厨房なんだ。犯人は厨房に火を放つ事でよくある火災事故だと思わせる。犯人はきっと頭の良い奴だよ」

　広場で展開した探偵ごっこの続きをまだしている。

でもその推測だと、犯人は脱走者ということでは無くなってしまうんじゃないだろうか？

待てよ。中で起こった事故だと思わせて、実は外から放火した。そう思わせて実は中？

頭の中が混乱して来た。

　「へぇ。木戸君て物知りなんだね。厨房が火災事故起きやすい場所だなんて私初めて聞いたよ」

　花山さんも話に加わっているようだ。

そう言えば広場で話を聞いた時から探偵ごっこをしていたとは言え、施設で習った事もない事を詳し過ぎる位に知っているけれど。

僕達は施設では国語や数学や社会と言った学問よりも、優しい人になるとか強い人になるとか、そう言った事しか教わってない筈だが。