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「まあね。それから草刈君には注意した方が良いよ」
木戸君はまだ僕の事を疑っている。
施設から出て来たタイミングがそんなに怪しかったのだろう。けれど僕は放火した記憶もないし、厨房に入った記憶もないのに。
第一、厨房には管理栄養士と調理師の人しか入れないことになっているし、僕達が興味本意で入ろうとすれば、何をするか判らないと門前払いをされてしまうのに。
「矢っ張り草刈君が怪しいのね。純朴に見えて何を考えてるか判らないと言う事か」
「優しい子だと思ってたけど違ったの? 何だか彼のことが怖くなって来た」
花山さんの言葉をきっかけに野田さんが疑心暗鬼に駆られ始めた。木戸君の部屋にいるのは花山さんだけじゃあなかったんだ。
「大人しい外見はフェイクだった訳か。騙される所だった」
野田さんに続き桜木さんも僕の事を疑い始めた。
僕はやってないのに。どうして皆信じてくれないんだ。今すぐここから飛び出て叫びたいけど木戸君の事だ。
否定する態度が更に怪しいと更なる疑いをかけてくる。
然しこの儘黙って木戸君や花山さんの遣り取りを聞いていても、状況は変わらない。
此処でこんな話を聞いてしまった以上、僕は身動きが出来っこないじゃないか……。
背後から先生達や他の子が僕の事を目撃していないか、冷たくて平たい廊下のタイルに目をやった。
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