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「……じゃあ、一つだけだぞ。味見だからな」
味見の許可を得た月山薫は、再度、何を食べようかと物色を始める。
重箱の蓋を開けて、中身を眺める月山薫を、冷蔵庫のドア越しに見守る。
伊達巻きは、甘いぞ。
あ、そのカマボコ美味しいんだけどな。
おいおい、海老はメインなんだから外すだろう、普通。
月山薫の彷徨う指の行方を、ドキドキハラハラしながら見守っていると、急に横を向いた月山薫と目が合った。
へ?
なんて思っている間に、月山薫の顔が迫ってきて、気が付いた時には唇を塞がれてた。
「ちょっ…!…んっ…」
唇を塞がれているうちに、閉めた冷蔵庫のドアに俺を押し付ける。
そんな手慣れた奴の所作一つに、いつも悔しくなる。
俺はというと、こんなキス一つで頭も心もパニック状態だ。
経験値の差ってやつだろうか。
どうしようもない事は分かっていても、俺ばかりが翻弄されてるみたいで悔しい。
ゆっくりと顔を離した月山薫が、艶のある、大人の色気を醸し出す笑みを浮かべる。
そんな微笑み一つで、俺の心臓は壊れそうなくらいにドキドキして、顔が真っ赤になるのが嫌でも分かる。
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