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明日から学校に復帰すると、北見は告げる。志木森の研究者と議論しながら、分析していたら面白くなってしまったのだそうだ。熱中すると周囲が見えない北見らしい。
各種のお土産は興野が用意していたが、喜ぶツボをよく把握していた。
エレベータに乗って帰途につくと、エレベータの事故を思い出した。エレベータに、北見の造った藻の塊を歩かせておくのも面白い。菌を食べるので、風邪予防にもなるかもしれない。
でも、あの時の乗客はどこに行ってしまったのだろう。藻に絡まれて沈んで行った海渡と、エレベータがだぶって見えた。
その夜、蒼から連絡があった。父親がまだ見つからない事と、救助がされていないようだと泣いていた。
新しい救助者が、全く来ないのだそうだ。係員に問うと、他に運ばれていると答えるが、その他はどこかと聞いても誰も答えない。
「興野…」
「俺達に何ができる?」
俺達が救助に行けるのは森だけで、海に権限はない。
最後に海に飛び込んだのは、貧困層が多くテロリストも多く含まれる。どの都市も収容することを怖れて、救助が出せない。
「でも、一言助言するならば、自力でたどり付いたならば、政府が保護できるということだ」
ゴムボートで、動力も付いていなかった。オールだけで進むだけの船で、どうやって陸地を目指したら良いのだろうか。
そんな時、微かな声が聞こえてきた。
『アキ兄ちゃん』
少女の声。ケラケラと笑う声も聞こえてきた。これは華菜の笑い声だ。よく笑う少女で、成長は遅かったが、頭脳だけは異常に発達していった。
確証はないが、もう一つの森の細菌がある。人体の一部分だけを発達し続け、母体を死に至らしめている。俺達もその影響を受け、代を重ねて免疫を持ちながら進化を続け、森の住人へと特化していったのだ。
華菜は感染し、頭脳を発達させた。
『アキ兄ちゃん。秋季ちゃんは死んでしまったの?見つからないよ』
声は幻ではないが、耳に聞こえている訳ではないようだった。どこで、聞こえているのか?探してみると、窓。コップ、振動が言葉になって、俺には感じるらしい。
「秋季も両親も亡くなった」
『父さん、母さんは知っているの。華菜に被さって心臓が止まったの。冬樹も生きているのね』
「百鬼、誰と喋っている?」
興野には華菜の声は聞こえていなかった。
第五章 眠れる森の頭脳
「幽霊ではなくて華菜なのか?」
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