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俺はこのまま年を取らなければ、二十歳で死亡することが分かってしまった。華菜が抗菌薬を作っているかもしれないが、頼るだけというわけにもいかない。
華菜は、俺が呼んでも目覚めなくなっていた。しかも、頭を使用してしまい、あきらかに弱ってきていた。
学校に行くと、若木菌のことも一高生徒は周知の事実になってしまっていた。若木菌は普通の人にとっては弱い菌で、俺のように長く年を取らないのは非常に珍しい。
年を取らないという意味で、女性の視線を集めている。危険なのだと言っても、年を取らないは重要なのかもしれない。
「興野、平穏な学校生活ってあるのかな」
「百鬼には無いみたいだね」
どこか興野が楽しそうだ。
「なあ百鬼、十八歳になったら結婚しようか」
何故、今、結婚なのだろうか?
「結婚していれば、俺も志木森に行けるからな」
米花市は結婚が許されるのは、男女共に十八歳だった。興野の誕生日は八月で、俺は十二月だ。結婚は申請してから、三か月を経過しないと受理されない。一時の気分での結婚を避けるためだ。十八歳になって申請しても、年が明けるな。ふと計算してから、十八歳それはまだ先のことだった。
それよりも、今は成長を戻さなくては死に至る。
「興野、護衛でも志木森には行けるけどさ。俺に護衛が必要かは、難しいな」
華菜のような天才ではない。俺は、地道な研究者にすぎない。
「自覚無いな…」
賑やかな通学路を過ぎると、どこか独特な雰囲気の一高に入る。ここの学生は、既に高校を卒業してしまっている者も多い。
志木森は研究都市として世界的に見てもトップレベルで、研究者の憧れの地だった。
「おはよう、百鬼」
都甲が声を掛けてきた。都甲も、プライベートは一切公表していないが、学生レベルではない情報網を持っている。
「興野、おはよう」
興野と並んでも見劣りしない身長。俺も欲しい。
「ん?んん?」
都甲は上履きに履き替えながら、俺の頭を再度見た。
「身長、伸びたよ…百鬼」
そんな事があるのか?比べる物がなかったので、とりあえず興野の胸と背を比較してみた。
「本当だ、僅かだけど、伸びた」
興野も茫然としていた。
「若木菌の影響が去ったのか?」
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